日記4月分

4月 3日（火）

Regina Meitorvpanvs（挨拶）

　エイプリルフールの節は、お騒がせして申し訳ありませんでした。
　普段よりもヒット数が多くて嬉しい限り。このサイトの存在意義を疑いたくなる一日となりました。
　ただ、トップページに飾っておいたハリボのパロディに誰も突っ込まなかったが笑える話と言えば笑える話。やっぱりマイナーすぎたかヒィヤッハァー！

離婚問題の解決策!?　家を半分に切断して妻と別居
2007年03月11日

［ベルリン　9日　ロイター］
　妻との離婚問題に悩んでいた43歳のドイツ人男性が、問題解決のためにチェーンソーで自宅を半分に切断、フォークリフトを使って“自分の取り分である半分”を持ち上げて移動、妻の元を去った。
　ゾンネベルグ警察によると、男性はベテランの石工。長さ8メートル、幅6メートルの木造住宅をきちんと測った後、チェーンソーで半分に切断したという。
「自分の取り分をもらっただけだ」と男性は話しているが、警察の広報担当者は「妻の方はあまり喜んでいないと思います」とコメント。
家を切断後、男性は半分をフォークリフトで持ち上げて兄弟が住む家の近くまで運んだ。現在は兄弟宅で暮らしているという。

　なんというか、ドイツらしい素敵なニュースですね。
　これがアメリカなんかだったら、チェーンソーが女房の解体に使われてリアルテキサスチェーンソーのような様相を呈すところですが、さすがはドイツ人。平和的で、かつコミカルに、しかもウィットに富んでいます。
　特に、きちんと「自分の取り分」を計測しているあたりが律儀。ただの当て付けにしても、ここまで出来るのはやはりドイツ流のユーモアが為せる業か。
　ひょっとしたら本人大真面目なのかもしれませんが。
　……時々、ドイツ人の行動がネタなのかマジなのか分からなくなる瞬間があります。

　紀伊国屋から、近日中にKinos Reiseの二巻が届くとのメールが来ました。
　7ユーロ半というとても文庫本とは思えないハイプライスが気になりますが、まあ手間賃だと思えばそれなりでしょう。最初は思わず米ドルの感覚で居たもんだから、日本円にして\1,200ちょっとと聞かされた時はビビりましたが。
　それにしても……嗚呼、『キノの旅』の短編は数あれど、その中でも名作と名高い「優しい国」が、遂にドイツ語で読めるんですよ！　なんて素晴らしい事でしょうか。
　……何が素晴らしいのかって？　俺が訊きてェよ。

　ハサハ語り。
　もういい加減、しえさんに何か語らせるとロクな事にならないのは承知の上なんですが、でも他にネタが浮かばなかったので。

　『サモンナイト2』作中に於いて、ハサハは子供の姿と大人の姿、二通りのグラフィックで登場します。
　無論、しえさんとしては子供の姿の方を主に「ハサハ」と認めているのですが、かといって大人の姿を嫌っているというわけではありません。それどころか、それも間違いなくハサハという存在の一部分であると思います。
　弁証法的に解釈すれば子供ハサハとは真命題であり、大人ハサハは反対命題に当たると考えられます。
　互いに相反する要素を持つ二つのハサハ――かたや痩身矮躯、かたやグラマラス。かたやロリ、かたやおねいさん。同じキャラクターでありながら、こうも異なる姿を本編中で晒すのは~~好き放題やってる~~『サモンナイト』シリーズでも珍しい事です。
　無論、ただ二つの姿を持っている、というだけではお話になりません。
　ここからが話のキモなのですが、「ハサハ」というキャラクターは単に二つの姿で登場するというだけでなく、重要なのは子供と大人の姿をアウフヘーベンした所に在るキャラである、という部分だとワタクシは確信しております。つまり、相反する二つの要素の特徴を全て合一した、最強の萌えキャラと言えるでしょう。
　そして、Aufheben、つまり「持ち上げる」ということは、ハサハは我々より、また他の何よりも一段と高い場所におわす事を傍証していることになるでしょう。
　マタイ伝に於いて「いと高き所にホサナ！」と謳われているように、高い場所におわすハサハこそが、最強の萌えキャラであると共に、数々の預言者によってその出現を噂された「ほむべき方」なのではないでしょうか。

　ハサハ、いと高き所に

4月 5日（木）

鎌と槌、コンパス（挨拶）

　戦利品。

・Kinos Reise Bd.2
・『ガンスリンガー・ガール』第8巻
・『かみちゅ！』第2巻

　――普段はいろんなジャンルが入り混じるしえさんの買い物に於いて、しかし今回は珍しく、どちらも同じメディアワークスの（※一部TOKYOPOP GmbHによる翻訳）単行本です。久しぶりですね、こういう買い物するの。
　作風がどうしようもないほど掛け離れている事を認めるにやぶさかではありませんが。

　とりあえず、『かみちゅ！』から見ていきましょうか。
　内容としては既刊の第一巻と同じく神の国（キビタス・デイ）と化した尾道で、ゆりえ様がのんびりと神様として生きてゆく内容になっております。ひたすらほのぼの。
　なお、事実上これがコミック版の最終巻として扱われてますが、そのため話はほとんどゆりえ様中心となっていて、章吉君に代表される周囲のエピソードがあまり語られません。そこが不満といえば不満でしょうか。
　しえさんとしては、特に三枝“シビッラ”みこちゃんの出番が少ないのがツライ。こう、171ディグリースの微妙な角度が（落ち着いて下さい）
　まあ、それを補って余りある萌えとエロさがあるので無問題ですが。
　ただ――ひとつ難を言えば、やけに~~おばさん~~所帯じみた光恵ちゃんのキャラとか、祀ちゃんの誇るこの世界よりも大きな胸とか、なんだかとても中学生とは思えないんですが。勿論、ナボコフ学派のしえさんの心の琴線を震わせるような事もありません。
　これも人間と神の間に横たわる溝ゆえでしょうね。ゆりえ様が神の国の住人ならば、その他の登場人物は言わば「地の国（キビタス・テレーナ）」の住人。地に縛られた人間には相応の萌えしか備わっていないけれど、ゆりえ様はやはり中学生とは思えない矮躯によって、しかし神性すら感じさせる萌えを醸し出しています。
　まさしく、かのヨハヌス・ケノートゥスが名著『アウリス・ウルピス』で"Dea moerum est."と語った通りです。
　……ところで、尾道が神の集う場所なら、もしかしてハサハも（ｒｙ

　ガンスリの方は、いつも通りリアルすぎてシャレになってない舞台背景をおにゃのこが銃を持って駆け回るというストーリーでした。
　「人形の恋」というモティーフと、義体に「ペトルーシュカ」という名前を付けるという、修辞に満ちた内容――そして、それまでの「担当官に対する盲目的な思慕」という義体の性格に疑問を投げ掛け、新たに「義体＝一人格としての慕情」という意欲的なテーマ。
　安易に萌える事を許さない作品です。
　実際、単なる「萌えを呼び起こす作品」として見るにはあまりに生々しく、暴力と絶望に満ちていて、しかしそこがしえさんのような変態手合いにはウケるのだろうな、と。
　しえさんもこの渡世長いですから、ハッピーエンドを期待して裏切られるような事は、もういい加減ありません。そうした諦念をもってしてみると、なるほど「ガンスリ」とは美しい作品です。
　――ちなみに、ハッピーエンドの幻想からしえさんを脱却させてくれたのは『漂流教室』だったりします。ありがとう楳津御大。でも子供相手にあんなレアリテートを見せ付けないでくれ。

　そして、待ちに待ったKinos Reise。
　とりあえず"Übertriebene Fürsorge"（“大きなお世話”くらいの意。原作では「過保護の国」）まで読み進んだんですが、疲れますね。訳が気合入ってて。
　なるべく辞書を使わずに読んでみようと思ったんですが、"Vom Fressen und Gefressenwerden"（“弱肉強食”。原作の「人を喰った話」）で突然"LKW"（Lastkraftwagen：トラックの略称）なんて単語が飛び出てきて、思わず辞書の世話に。原作を意識したのか、何箇所かで銃器の事を"Überzeuger"（「納得させるもの」）と呼んでたりしたのも印象深かったです。
　他にも、「母さん、兵隊になんかなりたくないよ（(c)ジョン・レノン）」の悲痛な叫びで知られる「まーくん」が、そのままMa-kunと呼ばれていたりして驚きました。しかも欄外に「少年か年下の男性の名前の後につける、日本語の呼称」とまで説明してあったりして。
　こうしてドイツ人は日本の文化を学び、日本の言葉を学び――そうした研鑚の果てに、遂には「萌え」という概念を頭ではなく、その肉で理解するようになる、という寸法です。
　親切なこったなオイ。
　……ちなみに、Bd.2からキノは女の子として扱われるようになりました。
　よかった。

　最近なんだか日記に誤字脱字、文法上のミスが非常に目立つしえさんですが、どうか来訪者の皆様にあっては、生暖かい目でご容赦戴きたいと思う所存。
　こう、新年度の仕事でアタマの中が『バービー・ガール』一曲リピートのような状態が続いているので、日記にまで手が回らないんです。ごめんなさい。
　アイマーバービーガー、インナーバービーワーアー（バリトン声で）

一言メール返信。

＞千鳥様
　キノスライゼ入手おめでとうございます。こちらも指をワキワキさせつつ読んでいます。
　最近のTOKYOPOP GmbHの積極的なローカライズには驚かされますが、その訳の秀逸さも驚愕モノだと思います。『よつばと！』を“YOTSUBA&!”とするあたりなんかが特に。この調子で次は“Göttchen!”と題した『かみちゅ！』を（ｒｙ
　『猫耳戦車隊』については……とりあえず「萌え＋戦記モノ」というジャンルの礎を築いた作品と思っております。それ以上でもそれ以下でもない、とでも言いましょうか。
　嫌いではないんですが。

4月10日（火）

フライアウェイ（挨拶）

　Kinos Reise Bd.2読了。
　なんか色々と気になった部分があったのでピックアップ。今日は日記らしい内容にはなりませんので、そのつもりでお願いします。
　いつもの事だけど。
　あと、独語キノの二巻を未読の方はネタバレ注意。

　"Vom Fressen und Gefressenwerden"　（原題：「人を喰った話」）

　独語："Es war nicht zu töten, aber ich wollte noch nicht sterben."
　訳：「殺したのはよくないよ、でもボクは死にたくなかったんだ」
　原文：「正しくないよ。でも、死にたくはなかったんだよ」

　原文ではキノ自身の事だけでなく、男達の人肉食についても言及していると取れる科白であるものの、ドイツ語の特性上それを再現する事が出来なかったようです。

　"Ein gastfreundliches Land"　（原題：「優しい国」）

　独語：Es war eine verdammt dicke Stadtmauer.
　訳：それはクソ分厚い城壁だった
　原文：（略）厚い城壁をくぐっていった

　別に強調するほど分厚いようにも思えないが、それよりどうしてこういう形容詞が用いられるのか。
　もしかして割とフツーに用いられてるんでしょうか。Verdammt.

　独語："Sie rufen immer: >Da kommt der Sack, hurra!<"
　訳：「みんないつも『あいつが来たぞ、ほら！』って言うんです」
　原文：「友達から“オクラ”とか“ねくら”とかからかわれるんですよ」

　みんなのアイドル、さくらちゃんの苦悩。嘲りの科白は"Sakura"と"Sack, hurra!"をかけたもの。
　Sackは俗語で「ヤツ」くらいの意です。あと稀にタマタマの俗称として使われたり。
　哀れさくら。

　独語："Auch er war Reisender."
　訳：「彼もまた旅人だった」
　原文：「旅人だったんだが、（略）」

　パースエイダー・スミスが「師匠」に言及した箇所だが、なぜか師匠が男性という前提で話されている。
　しかもこの後、キノ自身が師匠を「彼」と呼んでいたりして――単なる翻訳のミスか、或いはキノが複数の人間に師事したという裏設定があったのか。

　独語："Es war egoistisch...Verdammt!"
　訳：「こりゃエゴだよ……くそったれ！」
　原文：「エゴだよ……。これはエゴだ」

　だからなんでそんな形容詞を（ｒｙ

4月12日（木）

ランナウェイ（挨拶）

　『リリアとトレイズ』が一応完結したようです。
　ぶっちゃけた話、「一作目が案外売れたので、慌てて作ったRPG第二作目」のような雰囲気が漂っている当シリーズですが、仮にも鬼才・時雨沢恵一氏の作品ですから、それなりに読む価値はあります。

　……と思ってたのが昨日までのお話。
　早速『リリアとトレイズⅥ　私の王子様（下）』を読み終えたんですが、なんというか度肝を抜かれました。いろんな意味で。
　極端にカリカチュアライズされた悪役とか、なんとなく故・大藪春彦にそっくりな作風。特にストーリーの微妙さは大藪テイストたっぷり。ペキンパーで言うと『コンボイ』です。
　いや、特別駄作とは思いませんでしたが……でもやっぱりコレはなぁ……

　何かあったのかシグー？

　ところで、皆様は『リリアとトレイズ』シリーズを読む中で、それまでの時雨沢作品と異なる雰囲気を感じた事はありませんか？
　しえさんにはあります。
　特に顕著なのが「イクストーヴァの一番長い日」上下巻でしょうか。それまでの氏の作品には見られないタームやレトリックが頻出し、初めて読んだ時は大いなる違和感を覚えた記憶があります。
　もちろん私はイタい時雨沢信者ですから、それすらも「ああ、それまでの作品とは異なる雰囲気を醸成しようとしてるんだな」と好意的に受け止めておりましたが――しかし、先ほど読み返してみたら、そんな平和ボケ日本な思考を吹っ飛ばす単語が目に飛び込んできました。

リボルバー

　リボルバーです。回転式拳銃です。輪胴式拳銃とも言います。どうでもいい。
　肝心なのはそこではなく、時雨沢氏はそれまで自身の作品の中で、回転式弾倉の備わった拳銃を「回転式拳銃」か「リヴォルバー」としか表記していません。それが、ここに来て「リボルバー」と表記するようになりました。
　どうしてか。
　あれほど銃器にこだわりを見せる時雨沢氏が、なぜ既存の作品とは違う呼称を用いるのか――これも或いは「それまでとは違う雰囲気を醸し出すための要素」のひとつなのかもしれませんが、しえさんとしてはゴーストライターの存在を疑ってみたいと思います。
　だってそう考えないとこのデキは説明つきませんもの。というかそもそも誰が主人公なんだか、ただ『アリソン』シリーズのヒットに気をよくした電撃編集部がゴースト立てて無理矢理続編を作り上げたんじゃないか？　『アリソンIII下』で描かれたトレイズと『リリトレ』シリーズのトレイズの性格が食い違ってるのも、ゴーストが適当な仕事をした結果なんじゃな

　なぜだろう？　何も見え
　俺　ふし　　　　　　　だ。
　　　か　ない
　お
　　　　　ハサハ。
　　ゐ？

　蘇生。
　まあ、この出来具合ですらもしかしたら、時雨沢氏お得意の壮大な悪ふざけの延長なのかもしれませんが。次に製作される作品が、この不完全燃焼気味な『リリトレ』に劇的な展開をもたらす、とか。我々の予想の斜め上を行くのがシグースタイルですから。
　今は続編待ちですね。氏は「予定は未定」と仰ってますが、こうなりゃリアルミザリーと化して期待したいところです（斧を手に破顔しつつ）
　ついでに秋山瑞人氏には『ミナミノミナミノ』の続編を希望。『E.G.F』はもう諦めてるから無理しなくていいよ。

　最近とち狂った日記でアレですが、何事もなかったかのように一言メール返信。

＞Mr.Kite様
　お返事遅れて申し訳ありません。ご紹介の動画を拝見いたしました。
　私もこの業界長いですが、まさか三次元に萌えるとは思いませんでした。あれを見た後で、狐に神性が宿っていないなどとどうして言えるでしょうか。
　稲荷信仰の原点を見た思いです。ハイ。

＞名無し様
　お褒め戴いているところ恐縮なんですが……案外読み飛ばしもあったりして。
　それにしても、同じく独語版を手にしている方がいらっしゃると聞いて安心しました。なんかこう、中学校の新入生が小学校の同級生を見つけたような心境です。
　これからゆっくりと読み解いて行ってくださいませ。

4月17日（火）

ハイダウェイ（挨拶）

　駄文の方に『リリトレ』の用語辞典を追加しました。
　不真面目な出来でアレですが、また何か気付いたら書き足して行こうと思ってますので、来訪者の皆様におかれましては、何か追加してほしい項目等ございましたら、その旨お伝えください。できる限り善処したいと思います。

　ふと『狼と香辛料』を読んでみました。
　ハサハ主義者としては、狼耳娘の出てくる小説を読むのは背信的な行為に思えたのですが、遂に内なる欲望に負けて一巻を購入する運びになってしまったんですね。
　畜生。

　あらすじ。
　単車に乗っている最中、郵便配達夫のチャリを避けた拍子に木に激突して死んだイギリス人と同じ名前の行商人と、豊穣の神として崇められていた狼耳娘ホロが出会い、放浪しながら共に生きていくという、なんだか『キーリ』を獣耳萌えにコンバートしたようなストーリーが展開されます。主人公が行商人ということもあってか、作中では複雑極まる駆け引きが連続しますが、ガチガチの文系だったしえさんには何がなんだか分かりません。
　じゃあ面白くないのか――と思った方。
　そんなことはありません。ライトノベル特有の要素たる「萌え」が、この作品にはふんだんに盛り込まれています。
　特にホロ。
　このホロという女の子、狼耳と尻尾を装備した上、豊穣の神として何百年という月日を生きてきた為にひどく老獪で、そのくせ時には可愛らしい一面も見せるという素晴らしいキャラクターなのですが、しえさんが一番萌えたのはその科白の数々です。

　「わっちは神と呼ばれていたがよ。わっちゃあホロ以外の何者でもない」

　どうですこの訛り
　方言です。アクセントです。しかもあまり例を見ない特殊な訛り方。
　なんかこう、偏見も含めて申しますが、方言丸出しの喋り方というのはしえさんにとって「世間知らず」という性格をほぼ直接的に連想させるのです。しかし、ホロはそんな垢抜けない喋り方とは裏腹に、ひどく狡猾で賢しらな考え方をする狼娘。このギャップに、しえさんのハートはイチコロです。言うなれば“SHOT IN THE HEART”です。
　いつもそこには父親なるものがいる　（直後、心臓に五発の銃弾を撃ち込まれて死亡）

　ゲイリーは置いておいて。
　とりあえず、「デラシネな男と少女の物語」というモティーフはしえさんの最も好む所でありますし、のんびりした雰囲気も嫌いではありません。無論、ハサハ主義的な見地からしても、狼を神と認める事はハサハの神性を何ら損なうことはありません。
　良い作品だとは思うんですが、この『狼と香辛料』シリーズ、続刊も購入するかと問われれば――正直、迷うところです。
　モティーフの殆どは先に述べたように『キーリ』で殆ど語られたものですし、新鮮味に欠けているのが引っかかるんですね。個人的な好みを言わせて戴ければ、『キーリ』に於いて半ばパルプ・ノワール調で語られるハーヴェイの過去が特徴であったのに対し、そうした要素がない分だけ『狼と香辛料』には魅力が感じられません。
　しえさんもトシだからね。萌えだけを縁に本を読むのは辛い。

4月18日（水）

死の谷を歩む時も（挨拶）

　またアメリカの大学で乱射事件があったそうです。
　しえさんがその報に触れたのは昨夜帰宅してからの事だったのですが、奇しくも同じ時間に「長崎市長銃撃さる」という速報が伝えられておりました。それら二つの事件が全く無関係であるにも関わらず、早合点したしえさんは「韓国人留学生がバージニア州で長崎市長をズドン」という事件であると解釈し、これからの国際関係に暗い影を落とすのではないかと戦慄しました。
　どういう心配だ

　アメリカで起きたこの悲惨な事件を受けて、世間ではまた銃規制議論が再燃するだろうとの見方が強いようですが、しえさんとしてはその公算は低いものと思っております。
　ぶっちゃけた話、アメリカという国は銃でもって作り上げられた国であり、権利章典に次のように制定されているくらいですから、銃が社会から取り除かれる事は、絶対と言って良い程に有りえない事なのです。

・Right to keep and bear arms.
A well regulated Militia being necessary to the security of a free State, the right of the People to keep and bear Arms shall not be infringed.

・武器を保持する権利
　よく統制された民兵は自由国家の安全を確保する上で必要だから、おまえら市民は別に武装してもいいんじゃねぇの。

　つまり、日本で憲法第九条が神格化されて崇められているが如く、アメリカではこの権利章典の修正第二条こそが国家のアイデンティティなのです。
　先のコロンバイン高校での銃乱射事件に於いて、犯罪としての銃器の使用を咎める事こそ出来ても、徹底的な銃規制が実現しませんでした。これは犯人がアメリカ市民であり、アメリカ市民に対して武装の権利を定めた憲法によるところが大きかったのではないか、としえさんは考えます。
　柔軟性を欠いているとは思いますが、近代国家のお役所仕事なんてどれも似たり寄ったり。日本も然り。

　ちなみに、今回の事件の容疑者と目されているのは、韓国出身の男性だったそうで。
　件の人物がアメリカ市民権を所持しているかどうかはまだ不明（※グリーンカードは市民権まで保証していないはず）なのですが、このような非常にシビアな立場の人間が事件を起こしたとなっては、世論は銃規制ではなく移民の規制に傾くんじゃないかと思ってみたり。
　何にしろ、全米ライフル協会は今回も上手くやるんだろうな。大学で集会開いたりして。

　長崎市長さんは残念ながら亡くなられたようです。
　核問題に関してはしえさんと相容れないイデオロギーを持つ方ではありましたが、平和の徒であったことには疑いの余地もありません。そのような方が亡くなられたのは非常に悲しい事だと思います。いやマジに。ハサハ主義的にも、勿論。
　なにより、この事件を受けて、政治家さん達が萎縮してしまうことの無いように祈るばかりです。

　表向きには暴力団の手によるものとなっておりますが、ひょっとしたらどこかの国の浸透を受けてるんじゃないか。

　一言メール返信。

＞モル様
　ハサハ・ディシルターネ（アラム語で「こんにちは」）
　日本国内の方言というのには疎いのですが、それでも個性的な（或いはエキセントリックな）喋り方ってのは魅力的だと思います。
　低地ドイツ語とか見てるとウキウキします。方言というか殆ど別言語だけど。

4月21日（土）

あいつら未来に生きてんな（挨拶）

　ここの所、駄文ハイムの一言メールフォームを利用した迷惑メールが増えております。
　普段からスパム嫌いなしえさんですが、わざわざメールフォームを通じてスパムを乱発する奇特な業者さんがいることにビックリ。最初は誰かの悪戯かとも思ったんですが、同時間帯のアクセスログからIP抜いてみたら、フリービットとNTTというスパムメールのメッカを通してる事から、おそらくは業者の手によるものだろうと推測されます。
　一応、いちいちアカウントを偽装しつつ送り付けて来てはいるんですが、モニタ設定が1108*868とちょっと特徴的すぎてバレバレなのが泣ける。
　まさかこの“世界の果ての便所”駄文ハイムが、斯様な現象に悩まされる日が来るとは。無視しても良い規模なんですが、根性がひん曲がったしえさんとしては、ここは潔くyournetをホスト名に含むユーザーのアクセスを禁止することにしました。
　一応ログを調べてみましたが、業者以外にこのホストをお使いの方もいらっしゃらなかったようなので、とりあえず一安心。「業者じゃないけど使ってるぞ！」という方は、諦めて契約プロバイダを変更なさって下さい。
　……つーか、.htaccess使えないのねshinobi。
　どっかで見つけてきたアクセス規制プラグインを貰ってきたけど、しえさんが使っていいモンなのかなコレ。
　まあいいか。

　昨夜、仕事の帰りにふと発泡酒が飲みたくなりました。
　本当ならビールと行きたいところなのですが、意外と高いので仕方なく発泡酒に甘んじてしまうのが貧乏人の悲しい性。それにしえさんみたいな酒オンチじゃ味の違いも分からないしね。まあいいってことです。
　しえさんは主に『スーパーブルー』という銘柄を~~安いという理由だけで~~愛飲しておりますが、仕事帰りに寄るスーパーでは何故か取り扱っていないので、必定別の候補を探す事になります。500ml缶で150円を切るのがあればベスト。
　とは言うものの、そんな都合の良い物がすんなり見つかるわけがありません。しばし保冷庫の前をウロウロとしていると、見慣れない柄の缶が目に入りました。
　銘は『バーゲンブロー』とありました。
　お値段は驚きの140円。
　某社が韓国に工場を置いて生産したとのことですが、しえさんは別に国産とかそういうコトには拘らない人なので、よっしゃこれにするべよと手を伸ばしたんですが――

　『バーゲンブロー』の文字の下に、小さく“Neu Welt”と書かれていました。

　別に韓国産だって気にしません。ハサハ主義者ですから。　実態が「発砲麦焼酎」だからって気にしません。ハサハ主義者ですから。
　例え世界が海からライン川に至るまで我が物であったとしても、飢えることを選びます。ハサハ主義者ですから。
　しかし――しかしですよ！

　形容詞語尾変化を忘れるってどういう事ですか

　――解説。
　ドイツ語の形容詞は、後に付く名詞の性に応じて語尾が変化するようになっています。“Neu”はそれ単体でも形容詞として存在しますが、女性名詞であるWeltを修飾する場合には、女性形語尾の-eを付ける必要があります。
　つまり、致命的な文法的ミスがある――というわけ。

　数秒後、「ノイヴェルト」を保冷庫に戻すChenowth。
　いくら安かろうと、釈然としないものを感じる酒を飲むわけには行きませんので、代わりにぐび生を取り出してレジへと向かいました。高く付いたかもしれませんが、こういう些細な瑕疵が喉に刺さった小骨のように気になる性質なもんで。
　我ながら難儀な性格です。
　――いや、難儀な性格なのではなくて、そうある自分への自己陶酔が、私の行動規範をそう定めるのだと思いますが。多分。

4月25日（水）

Story of my life（挨拶）

特急車内で女性暴行＝誰も通報せず、36歳男逮捕－大阪
4月22日2時0分配信時事通信

特急電車内で女性に暴行したとして、大阪府警淀川署は21日、強姦（ごうかん）容疑で、滋賀県湖南市石部南、解体作業員、植園貴光容疑者（36）＝別の強姦事件で公判中＝を再逮捕した。容疑を認めている。犯行の一部は乗客の目の前で行われていたが、誰も制止したり通報したりしなかった。

　エロゲでよくあるジャンルの一つとして、「痴漢モノ」というものがあります。
　そのシチュエーションたるや非現実的なること凄まじく、乗車率100%超の通勤時間帯にイヤお前それ痴漢とかそういうレベルじゃねぇだろな悪戯を繰り返すという、まことファンタジーな作品が多いのですが――このニュースを鑑みるに実現も夢じゃないんでしょうね。
　人間の秘めたる可能性の素晴らしさよ。
　このまま行けば、世に存するエロゲのシチュの悉くが実現可能となる日も近いかもしれません。幼馴染が毎朝起こしに来てくれたり、突然親が再婚して義妹（或いは義姉）ができたり、異世界の召喚されたりしちゃいそうです。
　果てはパスタ一本分の間隙をゴースルーするとか、牛乳瓶一本分に迫る量をぶちまけるとか、腐女子が夢見るソドミーとかも実現可能になったりして。
　そう――我々秋葉原人が求めて止まなかった世界の光臨が、今まさに目の前に近付いているのです！
　随分生臭いユートピアだなオイ。

　――ちなみに、よくある「間を置かずに二回戦目突入」というシチュは、一応可能だったりします。体力的にひどく消耗しますけど。

　先日、同志皇翼様の日記で“エルカの乳だけで１週間生活”というバベルの塔の建設にも匹敵する計画の実行が宣言されました。
　どうですこのダメっぷり
　自称ダメ人間かつクソ人間たるしえさんも見習わなければいけませんね。

　とは言うものの。
　しえさんが奉るハサハに対し、同志のような妄想を抱く事はデロス同盟の資金を流用してパルテノン神殿を建てるのと同じくらいに許されない行為なので、しえさんの場合は別のアプローチを探さなければなりません。
　やはりアレですね。精神的充足。
　肉欲は虫けらに与えられた（(c)シラー）のですから、やはり理性の動物たるしえさん（←新事実）は、肉体的な満足よりもメンタルな充足を得るのが道理というもの。
　つーわけで、ここは一つ『ハサハのマナだけで１週間生活』というプロイェークトをここに発表したいと思います。

　イスラエルの家では、その糧をマナと名付けた。それは、コリアンダーの種に似て白く、蜜菓子のような味がした。

　Das Haus Israel nannte das Brot Manna. Es war weiß wie Koriandersamen und schmeckte wie Honigkuchen.

　ただの食いモンじゃん
　――精神的充足とか抜かしておきながら、ハラ満たしてどうするんですかしえさん。
　ちなみに、「マナ」とは主に『出エジプト記』に記された未知の食物を指しますが、ファンタジーなどで扱われる「マナ」はどっかの原始宗教で信じられている謎のエネルギーの事です。普段からマナは空気に満ちていて、それを上手く使う事で魔法やら何やらを使う事ができるようになる、という設定らしいです。
　しえさんは今はじめて知りました。
　……いや、ホントなんですよ。長年ファンタジーというものを目にしてきながら、時折現れる「マナ」というタームを、旧約聖書に登場するそれがモティーフであると信じて疑わず、この齢になるまで生きてきました。
　でもまあ、侵し難い神性を帯びたハサハの事ですから、食いモンのマナを天から降らせる事くらい容易いでしょう。ほら、そうこうしているうちに、空からはひらひらと舞い落ちるものが――

　マナ枯らし！？　（画面暗転・以下エンドロール）

　スパムが止まないので、とりあえずメールフォームをAzaqのものからShinobiのものに換装。
　これでダメだったらお手上げかな。でなきゃ無視か。

4月29日（日）

鳥（挨拶）

　チャリで鎌倉に行って来ました。
　普段は小町通りをのんびりと散策したり、鶴岡八幡宮内の丸山稲荷に参じて狐様ハァハァしたりできるんですが、折りしもゴールデンウィーク真っ只中、尋常じゃない数の人に揉みくちゃにされてしまいました。
　まさにクラウド・オブ・ピーポー。
　小町通りでは、愛車チーストイを引き引き歩くしえさんに観光客が「邪魔くせぇチャリだなオイ」という無遠慮な視線を投げ掛け、道を快走していればDQN車に煽られたりと、余所者に対する憎悪が全開になる一日となってしまいました。
　思わずハサハの寛容の教えも忘れ、スペインの辺境の住人のように「ウンフォラステーロー！」と絶叫したくなることひとしきり。
　しかし、観光客の傍若無人な態度だけが目に付いたかといえば、そうでもなかったりします。
　由比ガ浜～江ノ島までの海岸はトンビの来襲ポイントとして有名なのですが、それを知らない方はよく砂浜でサンドイッチなりおにぎりなりを食し、上空からスツーカの如く飛来するトンビに襲撃されて右往左往する姿がしばしば見られます。
　今日は特に観光客＝そうした事情に疎い方々が多かったので、海岸はヒッチコックの映画さながらの光景が展開されていて、ざまァみろとばかりに大笑いするしえさんでした。

　とか何とか通ぶった事を抜かしてみましたが、どうしてこんなに偉そうなんだろうね俺。
　ここでいつも通りにオチが付けばいいんですが、思いつかないので寝ます。