救われるべき者を救われる方(挨拶)
Erdbeeren & Marshmallows到着。とりあえず四巻まで。
印刷が汚かったり、断ち切りがズレまくってたり、果ては光沢紙のカバー無し(直接カラー印刷してある)だったりとぶっちゃけ同人誌レベル安っぽい外観ですが、まぁちゃんと右綴じになっているのでよしとしましょうか。日本のマンガは、とかくメリケンやユウローパでは左綴じにされがちなもんで。しかもコマの進め方も左綴じ準拠にするために、ページをそのまま反転印刷するという事も日常茶飯事。
これだと、例えば襟の合わせや構図のディティールなどが致命的なまでに崩れるモンなんですが、ドイツ人はそこんトコをよーく分かってますから、合えて右綴じを採用してるんですね。マラジェーツ。
ただ、やはり右綴じというのはドイチュレンダーに馴染みがないのか、左綴じのつもりで最初のページを開くと(つまりマンガでは本来奥付などが位置するページ)、「このページは本書の最終ページですが、なんで後ろから読んでるんですか? いきなりエンディングを見て読書の楽しみを台無しにしたいんですか?」というやけに挑戦的な警告文が印刷されております。ついでに一般的なコマ割りの例示までしてあって、初めてMangaというものに触れるドイツ人でも話の流れをスムースに理解できるような配慮がなされているのもこの警告ページの特徴。
親切なこってすね。
ちなみに、一巻の表紙にのみドイツ語の煽り文が印刷されています。
日本語版の煽り文は「かわいいは、正義!」というロックウェル硬度にすれば68くらいありそうなモノでしたが、ドイツ語版はそれを遥かに超えています。
もう説明すんのも面倒なので、ここに全文転載。ごめんよTOKYOPOP GmbH。
ERST RUBBELN, DANN RIECHEN!
Komm nä:her! Ich rieche nach Erdbeeren.
ごしごし擦ってみろ、薫りだすから!
おいでよ! わたしはイチゴの香りがするよ。
エロく聞こえるのはしえさんだけですか
……この短い文章が何を言わんとしているのかはよく分かりませんが、そこはかとなく漂う官能の響きだけは充分に伝わってきますね。このコピーを考えたのが誰だか知りませんが、コイツは間違いなく本編を読んでいないでしょう。もし少女たちを主役としたほのぼのストーリーをカンペキに理解していならばこんなコピーを思いつくはずがつーか書いた奴出て来いよ。
あと「石川」を"Sekikawa"って訳した奴もちょっと顔貸しなさい。……いや、これは仕方ないか。
して内容の方なんですが、なんというか……うーん。
これが例えば『キノの旅』を独語訳したKinos Reiseであれば、元々が「様々な文化の国を旅する」というコンセプトであるが故に、諸々の文化的な基礎知識を必要としない分だけに注釈も少なくて済んだのでしょうが、『苺ましまろ』は現代日本の現代っ子たちを文化としたマンガです。
登場人物(特に美羽の)の言葉遣い、(特に美羽の)思考体系、(特に美羽の)放埓な行動は現代に生きる我々ですらも「あるあるww」と「ねーよwww」の相半ばする笑いを以って受け入れられる類のもので、それこそが『苺ましまろ』の楽しみに他ならないのですが……そもそも異なる文化的基盤を持つドイツ人がこれを(例えドイツ語訳してあるとはいえ)読んだところで、果たして面白いと思えるのかは大いに疑問です。
一例を挙げますと、一巻の第一話、美羽と茉莉ちゃんが伸姉に拉致されて伊豆まで連れて行かれる場面。
日本語版では、行き先を尋ねた千佳のメールに対する返信が「伊豆方面」という四文字で示されているという簡潔さ、奇想天外さ、そのインパクトが半ば「面白さ」そのものだったとしえさんは思うのですが、ドイツ語版では「伊豆方面」と書かれた箇所にホワイトが塗られ、代わりに"SIND AUF WEG NACH IZU(伊豆に向かってる途中)と印字されています。
……冗長すぎて面白さを損ねてるとか以前にドイツ人がIZUが何処かを知ってるわけがないような気もしますね。注釈もないし。
他にも千佳の頬の「家出中」の落書きが削除されていて、話のオチ自体が完膚なきまでにスポイルされていたり、原作では版権や商標の絡みから微妙に捻った変名を使っていた商品がそのまま実名でローマ字転記されていたりと、なかなか楽しませてくれます。あとセリフの話者が取り違えられてる箇所が(これはよくあること)いくつか。
それと、別に本筋には直接関係ないんですが、一巻カラーページの時点での伸姉の全財産を示す「143円」という金額が「だいたい1ユーロだよん」という注釈によって簡潔に示されているのがなんだかムカつきました。あると言うには少なすぎ、無いというにはあるような気がするこの微妙な金額が、ユーロッパ人にとってはワンコインで示されてしまうのかと。
……つくづく、ユーロ高いなァ。
まぁ、現代ドイツ語の言葉遣いや間投詞、外来語の普及状況なんかが分かって、これはこれで面白い読み物なんですがね。
ちなみに、Kinos Reiseで「日常的に使うのかコレ?」と疑問に思った"verdammt"(くそったれな)という形容詞ですが、Erdbeeren & Marshmallowsでも美羽や伸姉やらが多用してました。
別にいいのかな。原義的にも「呪われるべき」とか「弾劾されるべき」みたいな意味しかないから。
あと、伸姉は高校生ではなく、一貫して「第十学年生」と紹介されています。向こうの教育制度は日本と違って柔軟性に富みまくっている(※第五学年から基幹学校、実科学校、ギムナジウムのいずれかへの進学が選択可能)ので、日本の小学校、中学校、高校といった括りに対応する概念が存在しないためです。
ギムナジウム生の伸姉とか想像できんな。
ここのところ、『CG定点観測』様のトコロで毎日「ハサハ」をキーワードに検索をかけるのがしえさんのライフワーク。
未だに描かれ、アップされ続けているあたりがハサハの素晴らしさを傍証しておりますね。最近では『ぼしのーと。』なるサイト様で一枚発見したり。マラジェーツ。
いあ! いあ! はさはあ! はさはあ くふあやく ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ぶるぐとむ あい! あい! はさはあ!
……サモナイでもそろそろクトゥルフの眷属を召喚できるようにならないもんかな。
新作のツインエイジではその辺が追加されてると嬉しいんですが、多分無理でしょうね。流石にヒヤデス星団から遠路はるばる呼び出すのは手間でしょうし。
・Charakter
ドイツ語で「性格」
・Chara
ドイツ語で「性格」を表す語の最初の二音節だけを切り取ったものだが、狭義的にマンガの登場人物を示す語としてドイツ語圏内に定着し始めているらしい。
しばらく忘れてた一言メール返信。
>皇翼様
仮の同居人に部屋の半分を占領されましたが、それのどこがめでたいのでしょうか。
カムバック俺のプライバシー。
コムト俺のプライバシーヴィーダー(分離動詞を用いながら)
>月宮様
情報提供ありがとうございます。
"Kino"という語自体はドイツ語の授業では必ずといっていいほど目にする単語ですね。前置詞と格が対応する例としてよく"Ins Kino"(映画館の中へ)が挙げられるので、おそらく時雨沢氏もそこで見知ったのではないですかね。
「キノ」という名前の由来として、辞典の方に追記させて戴きます。
ディープスロート様
あんなブリキ缶チハたんばんじゃーい。
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