絆創膏は下着です(挨拶)
私はアメリカをどの国よりも愛している。
そしてその故に、私にはこの国を批判する権利があると言いたい。
――ジェームズ・ボールドウィン
地上波で『ザ・シューター/極大射程』が放送されていました。
スティーヴン・ハンターが大好きなしえさんとしては見逃す訳には行かず、テレビの前にビールとイワシせんべいを用意して意気揚々と観賞を始めたんですが……これがまたビックリする位の原作レイプぶりでした。
しかもそれが地上波用にカットされてたモンですから、もうストーリーはワケワカメ。
慎み深いはずの南部人ボブ・リー・スワガーはかなり攻撃的になっていますし、ニコラス・“ニック”・メンフィスは冴えない新人FBI局員に大変身。原作でも愛国心だけは喪っていなかった筈のミーチャムも、いっそ清清しいほどの悪人として描かれていました。
まぁ、その辺は構わないんですよ。
銃器描写が素晴らしかったら、きっとまだ観られる作品になっていたはずです。しかしそれがまたツッコミ所満載ときたもので。
一発ごとに謎の閉鎖不良を起こすM82。
缶に当たって変形した筈の.408弾頭を回収した上にペーパー・パッチするCIA職員。
M4の再装填にボルトリリースではなくチャージングハンドルで“パチンコ”するスワガー(※ある意味ではリアル)。
ここまでダメ押しされたら、もう笑うしかありませんよ。親父の戦争土産の日本刀をヤクザに奪われそうになった挙句、はるばる東京まで来てヤクザとチャンバラを始めるスワガーの話でも読んでた方が遥かにマシです。
……もっとも、いつも言うように「批判なんて誰にでも出来る」んですから、ここは一つ良かったシーンを挙げてみましょうかね。
ええと……、ほら、アレですよ! 拳銃自殺専用マシーンのシーン! 小説だと違和感無かったんですが、実際に画でみると死ぬほど笑えました。
それだけ。
あと、上に書いた「チャンバラを始めるスワガーの話」は実在します。
その名も『四十七人目の男』。翻訳はしえさんの知る限り最悪の公手成幸。ストーリーは……うん。これに関しては語りたくない。ごめんこうむる。
『スクールボーイ閣下』読了。
いやぁ、なかなかよく出来た東方二次創作でしたね。月の“カズンズ”と共同で標的を追うユカリ・スマイリー、その隣に忠実に突き従う藍・ギラム、そして楽しく遊んでいる妖精の腕をへし折って喜ぶフォーン・チェン。まぁ、主人公は“スプークガール閣下”こと幽々子サマですが。
ゆゆ様はゆかりんの命令で東南アジアを飛び回っている間にも、御飯をたらふく食べたり、娼家に出入りしたりと、工作員の特権を満喫。その間にも、秘密口座の存在を洩らしたと疑われた霊夢が三合会はだしの残虐な方法で処刑されたり、ゆゆ様が白玉楼に戻ってみるとたまたま遊びに来ていた所を幽々子と間違われて射殺された射命丸が発見されたりします。自分が何の関係もない人間を巻き込んだ事や、監視対象であるドレ衣玖・コウの愛人である天子に恋をしてしまったため、遂に紫の指揮下を離れて独自に行動を始める幽々子・ウェスタビー。
幽々子「白玉楼(ホーム)とは、どんな白玉楼(ホーム)もなくなったときに行くところよ」
……すいません。ロクに知りもしない東方をル・カレ作品に当てはめようとすると、どうやっても人間関係が支離滅裂になるんですが。
気を取り直して、真面目に『スクールボーイ閣下』の感想でも。
毎度お馴染みの英国諜報部“サーカス”の人間を主役にしたこのスパイ小説は、やはりお馴染みのスマイリーが登場。しかし『鏡の国の戦争』からさらに時代が下ったせいか、しえさんにとって身近である非情なスパイ・マスターの面影は既に存在せず、代わりに個人の情と組織の論理とのジレンマで押し潰されそうな老人の性質を濃く表しています。
「現場」での工作を担当するジェリー・ウェスタビーはユーモアに溢れる若者ですが、ル・カレ作品の常として、やはり女に対する情が深すぎて破滅します。彼自身も「どうして人なんて信用しちまうんだろう」みたいな事をくよくよ悩みますが、そうした矛盾を内包したままで戦える兵士などいるはずがありません。スマイリーでさえも「人間性を擁護するために非人間的になり、同情心を擁護するために冷酷になる。差違を擁護するのに純一になる」と自らの葛藤を表現していますが、結局は彼らの「人を欺く」という商売が、どこかでその埋め合わせを無理矢理にでもしなければ、心の平衡が保てないかもしれません。
そして、ドレイク・コウ。
物語における敵役であり、麻薬密売に手を染める混じり気なしの悪党ですが……しかしそうしてまで財を得た動機というのが、自分にとって最愛の人物を取り返すためだと判明した時、しえさんは思わずその想いの一途さに涙さえ流しそうになりました。
『スクールボーイ閣下』はあくまでもスパイ小説ですが、ヒューマンドラマとしても一流の素質を持っていると信じますし、むしろそっちがメインなんじゃないかとさえ思えます。
ストーリーが地味なのは否定しませんが (リカルドに会いに行くあたりで眠くなった)。
『東方』各作品の体験版をボチボチ遊んでるんですが、どう頑張っても難しすぎるので、諦めて「戦場まんがシリーズ」を読むことにしました。
……いや、別に逃避じゃありませんよ。戦士としての心意気を養うために、松本零士の格調高い戦記からパワーを貰うための手続きです。
魔理沙「あいつ……わたしによくにてる……友だちになったら、いいやつかもな……」
アリス「魔法使いの親友は、倒す相手か……」
美鈴「ジャングルは密林、パンツはサルマタ。咲夜さんは乳パッドだ。わかったか?」
霊夢「わたしたちにあたえられるのは……憎悪だけだ」
チルノ「いまごろこんな弾幕といわれても、手おくれだ! いいか、これはこの世界でいちばんさいきょうな弾幕だ! いちばんさいきょうのスペルなんだ! あたいには、これしかないんだ! だから、これが一番いいんだ!」
おっけー、出撃
ハハハ、どうだ見たか! 遥か南方で相討ち果てた狙撃兵や、ケーニヒスティーガーで孤軍奮闘したドイツ兵を思えば、少女達の弾幕遊びなんぞ稚戯にも等しいわ! リグルだろうがみすちーだろうが一弾のもとに葬り去ってくれる!
……なんて調子乗ってたんですが、慧音にあっさり虐殺されました。
原因は一瞬の気の緩みだったんですよ。士道不覚悟ですが、でも仕方ないでしょう? 松本零士の描いた東方とか思い浮かべちゃったんだから。きっと全員メーテルですよ。