『アリソンII』辞典暫定版


 この辞典の編纂に当たっては、以下の方々よりご協力を賜りました。重ねて御礼申上げます。

celestialblue、ハサハ、寄道様 (順不同・敬称略)

『真昼の夜の夢』 >副題
 『アリソンII』のサブタイトル。元ネタはウィリアム・シェイクスピアの『真夏の夜の夢』
 かなりどうでもいいが、『真夏の夜の夢』の原題"A Midsummer Night's Dream"のMidsummerは真夏ではなく夏至のこと。誤訳と言えば誤訳だが、後の『アリソンII』のような小説のタイトルにも影響を及ぼしてしまった以上、これからも訂正される事はないと思われる。


『オーウェン・ニヒトー』 >P53
 元議員。祖国のロクシェ連邦からの独立を望まない融和主義者。
 実は『アリソンII』の舞台より遡ること十年前、イクストーヴァの王家を襲撃したグループの一味。何故そんな凶行に至ったのかは不明だが、ロクシアーヌク連邦加盟に積極的でなかった王家の方々が、彼には疎ましくてたまらなかったのかもしれない。
 最期は意地らしく抵抗したものの、ベネディクトに殴られ、捕まりそうになったところで自殺。娘がいたが、彼女が後々大騒動を巻き起こすことになる。
 名前の綴りはおそらくOwen。起源は不明。姓の方の綴りも不明。ラテン系?


『サングラス』 >P66
 元々は高高度における太陽光で飛行士の目を傷めないように、空軍で支給されたもの。氷原や雪原などでは太陽光が雪に反射して目に刺激を与えるため、それを防ぐためにアリソンが取り出した。
 今時のサングラスではなく、どちらかと言うとダサいレイバン風のデザインだと思われるが、これを着けているアリソンのイラストが無いのはやはりヒロインのイメージを壊してしまう事を恐れたのだろうか。


『狡兎死して走狗烹らる』 >P78
 司馬遷により編纂された『史記』に出てくる言葉。この前には「飛鳥尽きて良弓蔵おさめられ」とあり、何物も利用価値の無くなったとたんに放り出されてしまう事を表している。


『クロノグラフ』 >P89
 時計の種類のひとつ。原義的に言えば「時間を記録する(希Chronos-英graph)機能をもった時計」のことであり、ストップウォッチ機能付きのデジタル時計などもこれに含まれる。
 狭義的にはアナログ式時計で、かつストップウォッチ機能が付されたものを指す。文字盤には通常の長針、短針、秒針の他にクロノグラフ専用の三つの針が装備されている。リューズの上下にプッシュボタンが一つづつ配され、上のボタンを押すと計測開始・終了、下のボタンを押すと計測データをリセットする構造になっている。
 空軍では飛行時間を計測するために重宝され、後に計測時間を元に速度・移動距離等を計測することが出来るように「タキメーター」という機能を持つ文字盤、円形計算尺の機能を併せ持ったベゼルなどが装備されるようになった。
 ちなみに普通の時計より高め。格好だけつけたい方のために、盤面のデザインだけを模したニセクロノグラフも存在する。


『アエロサン』 >P94
 雪原・氷上をプロペラで滑走するソリ。おそらくロシア原産。第一次大戦の頃には既に存在していたという。
 時雨沢氏本人があとがきの中で「どうしても出したかった」というアエロサンだが、作中に登場するもののモデルは不明。「二人乗り」と表記されているからNKL-26?
 ちなみに、ホヴァークラフトっぽい物を想像しがちなアエロサンだが、実物写真を見ると割と変態な機械。


『試製二型機関短銃』 >P68
 スー・ベー・イルの空軍兵士が持っていたサブマシンガンのモデル。後にベネディクトが使用することになる。
 元になった試製二型機関短銃の名称について、時折「試製二型短機関銃」と表記される場合があるが、銅金義一陸軍大佐の著書によると、当時はサブマシンガンの事を「機関短銃」と呼んでいたという。したがって、ここでは「試製二型機関短銃」とする。
 実物に関する資料が乏しいため、詳しい諸元は不明。P145の描写を信じるならば装弾数は28発だが、現在追って調査中。


『複座戦闘機』 >P71
 ベネディクトが乗っていた戦闘機。後日、アリソンとヴィルに貸与されることになる。
 口絵にイラストがあるが、筆者には判別不可。形の上ではチェコスロバキアのAv35-3が近いが、Av-35は単座。どなたかこの機体に関して情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ご教示下さい。
 本編中ではこの戦闘機が崖から落下する場面が描かれているが、何を間違えたのかイラストではシュトルヒが落っこちている。
 (以下、AVC2760 3月28日追記)  掲示板での指摘により、作中で登場した機種はDewoitine製のD510と判明。開放式キャノピー、全長(本文の表記より誤差-30cm)、液冷V12エンジン、エンジンの張り出しや排気口などの特徴が合致したが、D510は単座。情報提供者のcelestialblue氏によれば、作中で複座となっていたのは、時雨沢氏による「嘘設定」の一つではないかとのこと。
 武装はプロペラ同軸の20mm機関砲が一門、そして翼下に7.5mm×54機銃が二門。ニヒトーが乱心した際、ベネディクトは「20mmじゃ危ないから」とアリソンの攻撃を許さなかったが、7.5ミリだけ使えばどうにかなったんじゃないかと思ったり思わなかったり。
 ちなみに、航空機に装着される機銃というのは“バラ撒いて当てる”という思想があるためか、案外命中精度は良くなかったりする。少なくとも、人質を取った相手だけをどうこうするには不向き。
 アリソンなら出来るかもしれないけど。


『フィオナ』 >P161
 ハタチそこそこのお姉さん。思い出したように復讐を始めるヒト。本名フランチェスカ。姓は不明。後の女王。
 ベネディクトは「フィオナ」を「スー・ベー・イルにはない名前」と評しているが、Fionaは元来ゲール語で「ぶどう」を表すという。
 後に「フランチェスカ」と名乗る。Franchescaには俗ラテン語で「フランス人」の意味があるそうだが、本編に関連した名前というわけではないらしい。
 続く三巻では伊達眼鏡を掛けているという設定だったが、なぜかイラストには描かれなかった。黒星紅白氏らしくない事である。


『チーズフォンデュ』 >P172
 フィオナが匿ったベネディクト達に振舞った料理。多分フランス語圏のスイス発祥の料理。
 本来は具材を串に刺して溶かしたチーズに絡める料理だが、作中ではチーズで具を煮込んでしまっている。手っ取り早く済ませたいのか、それとも不慣れな料理を簡単に食べさせようとするフィオナの気遣いか。
 ちなみに、本場スイスでは具材を鍋に落とすと罰ゲームが待っていると言うが、その具体的な内容については不明。


『APS』 >P176
 フィオナが隠し持っていた拳銃。ロシア製の半自動/全自動切り替え式の凶悪ピストル。
 APSは“Автоматический Пистолет Стечкина (アフタマティチェスキー・ピストレット・スチェッキーナ)”をラテンアルファベットにして頭文字をとったもの。「スチェッキン式全自動拳銃」とでも訳し得ようか。
 使用する弾丸は9mm×18マカロフ弾。装弾数20発と、全自動/半自動切り替え式のメカニズムも相まって、半ばサブマシンガン的な運用ができるようになっていた。また、全自動射撃の際の反動制御を容易にするため、遊底の重量を重くするなどして連射速度を下げている。
 作中では他にも、ホルスター兼用の木製ストックが登場する。これも反動制御を助けるためのオプションではあるが、作中ではヴィルの行った精密射撃の助けとなった。
 ちなみに、この銃を使う場面で、ヴィルは「使う分だけしか弾を装填しない」という、安全第一な使い方を披露してくれる。


『ロシアンティー』 >P192
 ベネディクトの紅茶の飲み方。ジャムを紅茶の入ったカップに入れ、掻き混ぜた後に飲む。
 しかし実際、ロシア人はこんな飲み方はせず、「ジャムを舐めながら紅茶を飲む」というのが正しい飲み方だという。全部をごっちゃにして飲むのは、ロシアの習慣が日本で曲解された結果だとか。
 まあ本編中ではベネディクトも「本当はお皿に添えて、食べながら紅茶を飲みます」と断ってはいるのだが。


『Fi-156』 >P226
 ベネディクトが用意させた新型観測機のモデル。降着装置は車輪式だが、作中では雪原や氷上で運用するためにソリが備え付けられている。また、どういう都合があったのか分からないが、本来前後三座であるはずが、作中ではA-6イントルーダーのようなサイドバイサイドを前後に配置した四座が採用されている。ベネディクトとフィオナがささやかなロマンスを体験するための配慮だが――実際には、軍用機はこうした事態を避けるために、並列配置を避ける傾向にある。アッー!
 愛称は『シュトルヒ(独:コウノトリ)』
 砲兵観測や偵察の際の利便性を図るため、最高速度は175km/h、失速速度はなんと30km/hまで引き下げられている。理論上、自動車よりも遅い速度で飛行する事が可能。
 そのため着陸に要する滑走路の長さはさほど長くなく、一説によれば50mでも足りたという。本編中でも短距離着陸をする場面が出てくる。
 ちなみに、その低速ゆえに空対空戦闘能力はほぼ皆無なこの機体だが、実戦では遅すぎて後方射撃位置から照準器に捕らえるまでの間に追い越してしまい、撃墜は難しかったという。


『翼端灯』 >P266
 飛行機や船の側面に配置されている灯火。夜闇の中でも進行方向がわかるように、左側に赤いランプ、右側に青いランプを配する。
 覚え方は「左翼はアカ」










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