『アリソンIII 上下』用語辞典やっぱり暫定版




 スペシャルサンクス: 銃好き様、イラストに騙された名無しさん、ハサハ(敬称略)


『ルトニを車窓から』 >上巻副題
 アレだろ? 溝口肇のチェロをBGMに世界各地の駅を訪ね歩く番組。


『陰謀という名の列車』 >下巻副題
 テネシー・ウィリアムズの戯曲『欲望という名の電車』のもじり。


『ユーフェミーア』 >上P34
 ヴィルの友人。愛称は「ユーミ」
 本文中の表記だと「ミ」にアクセントがあるような気がするが、Euphemiaをより原音に忠実にカナ表記するとすれば「ユーフェーミア」となろうか。「名高い」などといったような意味のギリシャ語に起源を持つ。または「婉曲」の意。
 ついでながら、Euphemiaは通常、愛称形では「エフィー」と呼ばれる。ユーミよりもこっちの方が良かった――と思うのは、筆者の身勝手というものだろう。


『ガーラット』 >上P48
 機関車の構造の一つ。動力部を機関車の前後に配置し、それらに挟まれるようにしてボイラーを搭載した台車を置いたもの。利点は様々だが、とりあえず通常の型に対して航続距離や牽引力が大きいというものが主である。
 現実に利用されているところでは、アフリカ諸国が多い。


『カメラその1』 >上P61
 フィオナが持参したカメラのうち、最初に登場したもの。二眼レフ。
 モデルはおそらく、ドイツはローライ製の「ローライコード」だと思われる。1929年に発売された「ローライフレックス」の廉価版で、現在でも生産を続けているという。ちなみに結構高価。
 追記――イラストに騙された名無しさん様より、プレートの形状やロゴの意匠からII型タイプ1かII型タイプ2ではないかとの指摘を戴いた。曰く、カールしたRの文字は旧モデルの顕著な特徴であるという。


『カメラその2』 >上P74
 イラストに騙された名無しさん様からの情報によると、ミノックス・カメラが元であるという。また本編中でフラッシュバルブを使用する場面があることから、1954年から製造されたシャッター同調接点付きのIIIs型だと推測される。
 元の設計は1936年だが、なんだかオーパーツじみた仕様を備えたカメラ。焦点調節機能は当たり前、しかも20cmまでの近接撮影が可能、ファインダーは視差を自然に解消し、おまけに専用の現像タンクは小型で簡単に持ち運びできる。……と概略だけ見てみたが、どう見てもスパイ御用達カメラだろコレ。書類を写し取る専用スタンドまで用意されてるし。
 また金属製のチェーンはストラップとしてだけではなく、一種の距離計として流用可能。


『列車砲』 >上P83
 複線の軌道をまたぐ台車に、砲身を据え付けたもの。かなりの大口径砲が主だが、線路自体を遊架として反動を処理するため、運用にはさほど困難はなかったとされる。
 本文中で国境地帯に配備されているものは、おそらく時雨沢氏オリジナル。「全長60メートル」と本文にはあるが、幾らなんでもデカすぎる。アンツィオアーニーですら30メートルそこそこなのに。


『テルト基地』 >P104
 正しくは「テルマ基地」。『アリソン』第一巻で登場したが、その本文中に「テルト基地」という誤植があったことを、著者が自己風刺したものと解釈されている。
 最新の版で修正されているかは不明。


『イーエン』 >上P173
 テロルさんのボディーガード。老人。
 下巻クライマックスでは、ドタマを撃ち抜かれても数秒ほど生存していた、奇跡の人。


『拳銃』 >上P175
 イーエンの所持していたもの。
 銃好き様からの情報提供によれば、スタイヤー社のM1912/P16ではないかとのこと。延長された固定弾倉やショルダーストックの装着能力など、作中で述べられているディティールに合致する。
 M1912/P16はオーストリア製のM1912をベースに改造が施されたもので、全自動射撃能力の付与や固定弾倉の延長などの改修が行われている模様。おそらく塹壕などでの近接戦闘に際して短機関銃のような用途で使用するためだろうが、生産数が少ない上に現存する個体がほとんど存在しないため、詳細なスペックなどは割愛させて戴きたい。


『デポ』 >上P181
 英語。フランス語からの借用語で、「駅」や「集積地」などの意味を表すが、軍隊の俗語では兵站などを意味する。
 稀に「スパイの隠れ家」としての意味合いで用いられる例が見られる。


『旋条痕』 >上P209
 通常、銃身には何本かの溝が緩やかな螺旋状に掘られており(ライフリング)、弾丸をこれに食い込ませ、沿わせて進ませる事によって旋転させて弾道を安定させる。その際に弾丸につく傷のことを旋条痕という。
 旋条痕は銃によって形状やピッチが異なるものとなる。また同一モデルの銃身であっても、磨耗の度合いや製造上の微妙な誤差などの要素によって、銃弾に刻まれる擦過痕はある単一の銃器固有のものになるのが普通。このため、弾丸一つから、それが発射された銃器を特定することが可能。
 ストーク少佐が新しい銃身を要求したのは、射撃した後で交換して、以前の銃身で発射した弾頭を回収されても旋条痕を同定できないようにするため。つまりは証拠隠滅に使うつもりだったらしい。
 ちなみに、精確な術語は「条痕」が正しいとか。


『機関銃』 >下P19
 大陸横断特急を追い掛けてきた列車に装備された機関銃。
 ルイスM1911?


『装甲軌道車』 >下P54
 戦車の一種で、通常の無限軌道の他に線路を走れるような装備を追加したもの。
 モデルは日本製の九五式装甲軌道車。「線路も走れる戦車」というよりは、「線路外も走れる鉄道」が本来の設計思想であり、当時の南満州鉄道を馬賊などの襲撃から守るため(だけ)に開発された。
 装甲列車ほどの火力もなく、なんだか中途半端な印象を受ける。日本以外にこの手の車輌が開発されている例が見当たらないが、やはり想定される使用状況が限定的すぎるのだろう。
 作中ではストーク少佐曰く「つい最近開発」したとの事だが、まさかスー・ベー・イルの鉄道事情も馬賊に悩まされるようになってきているのだろうか。


『散弾銃』 >下P70
 モデルはM1917。『キノの旅』に登場したM1897の軍用モデル。
 本文中には俗称として「塹壕銃」という呼称が登場しているが、これは実際にM1917が「トレンチ・ガン」と呼ばれる事からきているものと思われる。
 散弾銃とはその名の通り、一つの薬包に入った複数の弾丸が散らばりながら発射されるタイプの銃器を指す。元々は狩猟用だが、その広い範囲をカバーするという特性ゆえに軍用目的に転用されることも多い。しかし塹壕などの近距離戦闘で使用された場合、撃たれた人体は複数の鉛玉に引き千切られて、ちょっと見られないような姿になってしまうため、現在ではその使用をある程度制限されている。――少なくとも、公式には。


『ライフル』 >下P71
 モデルはラハティM39。フィンランド製の20mm対戦車ライフルで、実際には戦車に対してほとんど無力であったものの、二連装にして対空砲にしたり、トーチカをぶっ壊したりとそこそこ活躍した。同世代の対戦車兵器が成型炸薬弾頭などに移行しつつある中、弾速と質量だけで装甲をブチ抜こうとした男気溢れるライフル。
 ちなみに、二脚と並ぶように装着されているソリは、元々雪国のフィンランドに於いて、雪上を引きずって移動できるように配慮されたもの。それほどまでに重量がかさんでいるのである。


『ノック』 >下P96
 アリソンによる独特の言い回し。「当たっても装甲を軽くノックする程度じゃない?」
 低威力の対戦車砲が「ドア・ノッカー」と揶揄されることと関係があるかもしれない。









ご意見・感想などございましたら、掲示板やTOPページのメールフォームから。
私的利用を超える範囲の引用に際しては、引用元として当サイト名の明記をお願い致します。

戻る