『リリアとトレイズ そして二人は旅行に行った』用語辞典
未来永劫暫定版



『リリア』 >上P10
 『リリアとトレイズ』に於けるヒロインと推測される
 本名はリリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツ。リリアーヌはヘブライ語でも何でもなく、スー・ベー・イルの地名に基づいていると思われる(『アリソン』III下参照)
 続く名前は『アリソン』シリーズで登場した人物から。アイカシアはアリソンの実父の仮名、コラソンは「未来の家」のコラソン女史、ウィッティングトンはアリソンの旧姓。シュルツはヴィルの姓。言わば祖父母と両親の名前を全部背負ってるということになる。
 15歳のツンデレ。なぜか本編中で物語の中心に据えられる事がほとんど無く、主人公らしからぬ扱いの悪さが目立つ。


『サイドカー』 >上P22
 トレイズ(後述)の愛車。モデルはURAL 650。
 「なかなか新しいタイプ」とは書いてあるが、その実URALは既存のBMW製R75のデッドコピーであり、最新型というわけではない点に注意。というのも、第二次大戦後、ソ連がドイツの工業生産設備を全部そっくり持ち帰って作った、いわば後発のパチモンであるため。カメラで言えばゾルキー。
 無論本家BMWほどのスペックはないと思われるが、細かい部分で改修が施されており、例えばブレーキレバーのヒンジがBMW製ではハンドル両端を支点にしていたのに対し、URALではグリップより内側にブラケットを介して支点を設ける方式に変更されている。
 ちなみに現在でも生産されているため、輸入業者や代理店などを介し、必要な保安装置を取り付ければ日本でも購入でき、また側車の車輪もデファレンシャルで駆動するため、普通免許で乗る事が出来たり出来なかったり。


『トレイズ』>上P23
 主人公その2。16歳。本名は不明だが、歴としたイクス王国の王子様。つまりベネディクトとフィオナの子供。
 初出は『アリソンIII下』。その際の印象は飄々とした感じの少年だったが、実はただの優柔不断なヘタレだと後に判明する。
 ベゼル語とロクシェ語を解し、銃器の取り扱いから飛行機の操縦までこなす。リリアを密かに慕い、なんとかアプローチを試みるも、生来のヘタレ気質となぜか巻き込まれる厄介事のおかげで全く進展を見ていない。


『トラヴァス』 >上P32
 ヴィル。


『トルカシア』 >上P63
 ロクシェ連邦構成国家の一つ。何となくイタリアのヴェネツィア本島を彷彿とさせる。
 というか住人の名前がイタリア系。


『サブマシンガン』 >上P80
 モデルはVz61。
 何故か時雨沢氏は『リリアとトレイズ』シリーズ以降、旧東側諸国の銃器を頻繁に登場させており、これはその最初の一つになるだろうか。旧チェコスロヴァキアの国営銃器工場で開発されたサブマシンガンで、全長は約27cmと小さめ。元々は「車輌搭乗員の邪魔にならない自動火器」を設計思想として開発されたが、あまりに小型化された上に完成度が高すぎたため、その他の用途にまで転用されることになる。テロとか。
 口径は7.65mmで装弾数は20発。単発と連発が安全装置兼用のレバーによって切り替えられる。
 小型化を念頭に置いた当時のサブマシンガンの殆どが、反動などによる命中率低下を免れなかったのに対し、Vz61はボルトアッセンブリーを後退位置で一瞬止める「レートリデューサー」と呼ばれる機構や、フォアグリップとしての機能を持たせるために信じられないくらいカッチリと固定される弾倉、そして合理的に折りたたまれるショルダーストックなど、工業国らしい配慮が細部に渡って行き届いている。


『マテオ』 >上P136
 イタ公。「マタイ」のイタリア語表記。


『水上機』 >上P137
 94式水偵?


『単葉小型水上機』 >上P152
 二式水戦?


『拳銃』 >上P160
 何だコレ。


『おとぎ話』 >上P192
 元となったのはグリム童話KHM-15『ヘンゼルとグレーテル』


『アイン・モルソー』 >上P204
 “導師様”。最後に死ぬ。
 その正体は西側のスパイで、かなり前からロクシェでの市民権を獲得していた古狐。私心を捨てて身寄りの無い子供達を世話していると見せかけて、実はその子供をアレな趣味の実力者に世話していた。そうした人身売買斡旋業者としての顔すらも表向きで、実際には顧客である実力者たちの弱みを握り、有益な情報を得て祖国へと流していたと疑われている。
 こうした戦略はスー・ベー・イル内に於いて早くから採られていたと見られ、ムート・コラソンも同じ任務に就いていた事が後に明らかになる――が、彼女の場合はまた少し事情が違う。
 どうでもいいが、東ヨーロッパでは子供の人身売買が真面目に深刻な状態にあったりなかったりする。


『カルロ』 >上P211
 小生意気なガキ。初登場はP112だが、名前が出るのはここが初めて。
 名前はCharlesと同語源であり、たぶんドイツ語のKerl(男)と同義。現代ドイツ語では口語で「あいつ」などといった意味で用いられるが、カルロが小生意気な性格である事を考えると、なかなか含蓄のある名前である――と考えるのは牽強付会に過ぎるだろうか。
 女の子であったことがII巻で判明するが、その際に「カルラ」と呼ばれた事からも、トルカシア周辺の文化がラテン形であると推測することが出来る(ラテン語圏、特にイタリアにあっては、男性名がo、女性名がaで終わる傾向が強い)

 ちなみに、II巻口絵では帽子に隠れた左手の中指を突き出している破廉恥なガキ。以降もたびたび登場する。


『飛行艇』 >上P231
 モデルは九七式飛行艇? 一般的には専ら「川西式四発飛行艇」の名称で呼ばれているという。
 当初は軍用として製作されたが、後に一部が輸送機として運用されるようになり、そのなかのさらに一部が旧大日本航空によって使用された。作中に描かれているようなソファなどの豪華な内装も実際に装備されていたもの
 当時としては優れた水上機としての設計に加え、やりすぎなくらい広い大面積主翼のおかげで長大な航続距離を誇り、その設計は戦後のPS-1などに引き継がれることになる。


『アックス』 >上P245
 トラヴァス少佐の右腕。
 その実、正体は『アリソン』第一巻にて射殺されたグラツ大尉の娘。かつて別の名前だった頃のトラヴァス少佐が自分の父親を殺したと知り、なんだか微妙に裏切りそうな雰囲気を醸し出している女性。
 だが、トラヴァスはとっくにそれを看破している様子。


『おまえの頭に当てれば問題ない』 >下P22
 トレイズの脅し文句。
 通常の弾丸は全体を真鍮で覆われ、人体に当たると突き抜けたり、骨に当たってあらぬ方向へ跳弾となって飛んで行ったりする。だが真鍮のカバーを一部あるいは全部剥ぎ取った形状のものは、人体に食い込んだ瞬間に変形して表面積が増大、それが抵抗となって貫通性能が極端に低下するため、狙った相手以外のものに弾丸が当たる危険性が少ない。「頭蓋骨の内側で滑ってそこに留まる」というのも決して誇張ではないだろう。
 ただ、無論銃弾はその運動エネルギーを殺し切るまで頭蓋骨の中を走り回るので、撃たれた方としてはたまったものではない。
 また、一部のこうしたソフトポイント弾頭は、至近距離では弾頭が変形する前に貫通してしまう不具合も存在する。


『操縦桿はあなたに』 >下P33
“You have control.”のもじりか、あるいは時雨沢氏による訳語。
 二人以上の飛行士が乗り込む機体の場合、どちらかが操縦を代わるには委譲する側が“You have control.”と伝えて手足を操縦装置から離し、委譲された方は“I have control”と答えるのが通常の手順となっているそうである。


『真っ黒な戦闘機』 >下P75
 アリソンが試験飛行を行っていた新型戦闘機。
 モデルはフォッケウルフ社製のTa-152。30mmペラ同軸機銃に20mm機関砲(MG-151?)2門という武装を考えると、C型生産機ではなくH型生産機であろう。試験機なのにいきなりH型。
 既存のFw-190のD型を原型に、高々度迎撃のための改修を行っただけの機体だが、色々と弄っている内に全備重量が1000kgほど増加し、それに伴って主翼面積の拡大や稼動部の油圧化などが実現された。ドイツ人のクラフツマンシップが溢れる飛行機。
 特に搭載されたユンカース製のエンジンには、高々度での性能を確保するために水メタノール噴射装置などが取り付けられており、瞬間的に出力を通常の1700馬力から2000馬力程度まで増強させる事が出来た。
 作中でも、その異様なまでの加速力を見せつけるかのような描写がある。レシプロ機としては行き着く所までイッちゃった感のある機体なので、これから先『リリアとトレイズ』シリーズに於いてどのような新型機が登場するのか――そんな事を考えさせる。
 ジェット機とか出たらどうしよう。


『メグ』 >下P224
 リリアの親友。西側出身。
 本名はシュトラウスキー・メグミカ。姓はどことなくポーランド系だが、「メグミカ」なる名前はあまり聞かない。「メグ」は通常Margaretの愛称形だから。
 ロクシェ語を半年で殆どマスターしたという脅威の頭脳の持ち主。いくら人工言語とはいえそれは流石に……。


『ロクシェ語』 >下P226
 ロクシェ語については特筆すべき事もないが、ここではロクシェ語が「人工言語」であるという新たな事実が明らかにされている。
 人工言語とはその名の通り人工的に作り出された言葉で、主語の人称に関わらず動詞の変化は一定であったり、名詞性は廃止されその格変化は一律になり、複合語は接辞を単純化する事で容易に作り出せる――などといったいわゆる「全世界共通の理想の言語」だが、実際には語彙面で既存の言語の特徴が現れてしまうため、「まったく新しい言葉」には成り得ない。そのため、エスペラント語などの実在する人工言語も、実態としてはインド・ヨーロッパ語族に分類され、非ヨーロッパ語圏の人間には習得が比較的困難だったりする。
 ロクシェ語がいかなる経緯で成立したかは不明だが、作中の表記によれば「成立は200年ほど前」と割と最近のことなので、それまで既存の言語圏同士で諍いがあった事は想像に難くない。
 ちなみに、ベネディクトを始めとするベゼル語母語者の話し方を見ると、やけに膠着語っぽい。







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