『リリアとトレイズ イクストーヴァの一番長い日』用語辞典
人食い族の巨根が粗チンになろうとも暫定版



『イクストーヴァの一番長い日』 >副題
 『リリアとトレイズ III〜IV』のサブタイトル。
 「〜の一番長い日」というサブタイトルは往々にしてよく使われるが、おそらくその最古の物は岡本喜八『日本のいちばん長い日』であろう。日本語のタイトルに限定しなければ、名作映画“The Longest Day”(邦題:『史上最大の作戦』)が元ネタ、という事も考えられる。


『ライフル』 >上P44
 トレイズ愛用のライフル。かつて王室警護官の一人から譲り受けたもの。
 モデルはモシン・ナガンM1891/30。帝政ロシア時代に制定されたライフルを、1930年代に改修したもの。『キノの旅を二倍楽しむために』でもこれについては解説しており、また詳しい諸元のほとんどは『リリトレ』本編中でも記されているので、ここでは敢えて記述しない。ただ、『キノ』で使用されたものが水平のボルトハンドルを装備した通常型タイプだったのに対し、『リリトレ』では狙撃銃用として改修された下方折り曲げ型のボルトハンドルに換装されている。はず。
 本編では狩猟用にスコープが使用されているが、これはモシン・ナガン専用に設計されたPU型スコープだと推測される。T字型の独特のレティクルは狙点に覆い被さる事がなく、また3.5倍という低倍率との組み合わせは特に中距離の市街戦で威力を発揮したと言われている。
 どうでもいいが、トレイズが狼を狙う場面で映画『ENEMY AT THE GATE』を思い出した人は多いと思う。


『ラウリー』 >上P110
 今回のトラブルメーカー。『アリソンII』で登場した、オーウェン・ニヒトーの娘。
 イクス王国と連邦との融和を目指していた父親の遺志を継いだとかいうわけではなく、イクスに伝わる「秘宝」を頂戴しがてら、父親の復讐を果たそうとしているだけの人。従えている部下は、東西融和の際に軍から大量に解雇された人間か。
 18年間練りに練りこまれた計画も、トレイズが引っ掻き回したり、トラヴァス少佐達の予想外の介入があったりした結果挫折。おまけに、肝心の「秘宝」は現代では意味を成さないものと知り、ラウリーがっかり。
 そのせいか、その深い憎悪と動機の確固さにも関わらず「なんか間抜けっぽい」という意見が多い、ちょっぴり不憫な子。


『エルバー』 >上P111
 ラウリーの右腕。爺さん。
 その年季を活かし、サブマシンガンでタンスを撃ち抜いたり、遠距離からトレイズのモシン・ナガンを撃ち砕いたりと八面六臂の大活躍をする。ラウリーの部下の中では比較的古参らしく、彼女が子供の頃から知り合っていたと受け取れる記述がいくつかある。
 特にイクス王国への憎悪の念があったわけではないようだが、ラウリーに付き従った結果として今作の事件に加担するようになったらしい。迷惑といえば迷惑な話。
 最後はトレイズに狙撃され、ラウリーに看取られながら死亡。思想も何もなく、ただ主人の命にのみ忠実に戦い、そして死んでゆく――そんなアツいキャラクター。


『サブマシンガン』 >上P127
 ラウリー御一行様が持ち込んだもの。モデルであるVz61については『リリトレI, II辞典』の項目を参照されたし。
 小型化が災いして、テロリズムに供されるという好例。


『小型リボルバー』 >上P132
 ラウリーの持っていたリボルバー。モデルは明記されていないが、イラストを見る限りS&W製M36、2インチモデルであるように見受けられる(シリンダーキャッチの形状やバレルとツライチのシュラウドから)
 ちなみに、時雨沢氏は回転式拳銃のことを一貫して「リヴォルバー」或いは「回転式拳銃」と表記している。しかしここで「リボルバー」という垢抜けない表記が使われた事から、リリトレシリーズが実はゴーストライターの手によるものではないか、という説が囁かれる根拠となっている。
 おそらくは意図的に変えていると思われるのだが。


『自動式拳銃』 >上P142
 モデルは9mm口径のCz75。下巻のイラストによると、どうやらプレス工法が用いられた後期型ではなく、鋼材ブロックからの削り出しで成型された前期型の模様。激レア。
 旧チェコスロバキア製。東側の武器にしては流麗なフォルム、複列弾倉の採用にも関わらず握りやすいグリップ、後に9mm拳銃の基準となる15発の装弾数の確保などの先進的な特徴が目立つが、ここから後述する「Cz75最強伝説」が生まれることになる。
 外貨獲得用に多くが輸出されたが、当時は折りしも冷戦時代だったため、アメリカには輸出されることはなかった。同じ頃、当時コンバット・シューティングの第一人者として知られていたジェフ・クーパーが「Cz75最ッ高――ッ!」と抜かしたため、その希少価値や斬新な設計と相まって、アメリカでは「最強の拳銃」というような評価が定着。高い関税を覚悟して、カナダやヨーロッパ経由で輸入する愛好家が後を絶たなかった。
 無論ただの拳銃であり、別に威力が強いだとか、命中精度が他に比べて抜群だとか、決してそんなことはない。現在ではコレクターズ・アイテム扱いだが、それでもその価値は主に美術的・歴史的なものに留まっていると思われる。
 本編中でも特に目立った使われ方はしていない。


『タクティカル・リロード』 >下P66
 ラウリー御一行様の中の最古参、エルバーが披露した技。
 通常、銃の弾倉交換は装填されている弾丸を全て撃ち尽くした際に行われるが、より実戦的な技術として、最後の一発が薬室に装填された時点で弾倉を交換する技術が編み出された。これが一般的にタクティカル・リロードと呼ばれている。
 弾倉交換は最も無防備な瞬間であり、特に遮蔽物が多く、接近戦になりがちな室内戦闘では、その瞬間に反撃されると大きな痛手となる。だが、薬室に一発だけ装填した状態で弾倉交換をすれば、その隙を突かれても一発だけは撃ち返せる、という寸法。
 現在では「タクティカル・リロード」の定義はもっと広義的なものになり、「残弾の有無に関わらず、弾倉を新しいものに取り替える」という動作を指すらしい。


『ライフル』 >下P133
 トラヴァス少佐の持ってきたもの。モデルはデ・リーズル・カービン。
 不良品として処分されたリー・エンフィールド小銃、またコルトM1911などの部品を流用して作った「寄せ集め」で、見た目も構造も珍妙極まるが、れっきとした軍用ライフル。その静粛性を買われ、主に特殊作戦などに用いられたという。
 ボルトアクション、大型サイレンサーの採用、そして低初速の.45口径弾の使用といった、「とにかく静かなヤツ」という設計思想に基づいて作られたものの、やはりキワモノ扱いされたのか、実際には100挺あまりが生産されただけに留まる。


『ライフル』 >下P200
 下巻クライマックスでトレイズが使用した狙撃銃。モデルはソ連製SVD狙撃銃。
 ソ連軍では、第二次大戦以降も前出のモシン・ナガンを狙撃銃として運用していたが、1960年代に経年劣化などを理由に新たな後継機として開発、採用された。
 半自動式メカニズムの採用、白兵戦闘を想定した銃剣装着ラグなど狙撃銃としては型破りな設計が多いものの、これは設計思想が一般的な「狙撃銃」と異なることによる。西側で言う狙撃兵は主に独立したグループで行動するが、ソ連では狙撃兵を「分隊内における役割の一つ」として位置付けており、劣悪環境下での野戦に追従できるような性能がこのSVDにも求められた。
 ゆえに「狙撃銃」と言うほどの遠距離精密射撃能力はなく、あくまで一般的な歩兵ライフルの射程の短さと精度の低さを補う程度のものだが、構造の堅牢さは他国の狙撃銃に比べて格段に高い。発射ガスによって腐食するのを防ぐために機関部にクロムメッキを施したり、万が一スコープが使用不能になっても照準が出来るように通常の谷型照準器が装備されていたりと、手荒く扱われてもヘタこれない子。命中精度を犠牲にしてまで半自動式を採用したのも、乱戦時に対応できるようにとの配慮らしい。
 スコープは専用に設計されたものが使用される。本編中で登場するものはPSO-1型スコープで、1.7mの対象物(主に成人男性)を基準としたレンジファインダー、赤外線フィルター、夜間照準用にレティクルを発光させるためのランプなどが付属している。
 弾丸はモシン・ナガンと同じ7.62mm×54R弾を用いる。弾縁(リム)が大きく張り出した薬莢の形状は、かつてモシン・ナガンが開発された頃、エキストラクターが引っかかり易いように考案されたものだが、後の自動式火器の開発にあたってはこの弾縁が様々な障害となった。にも関わらず、この弾種をSVD用として選定したのは――新しいのを作るのが面倒だったのだろう。多分。
 『リリアとトレイズV/VI私の王子様』に於いてもちょっぴり登場する。


『小型機』 >下P231
 今作登場のヒコーキ。ウェストランド製P-12。
 主に艦隊支援を目的として設計され、ライサンダーの機体を魔改造する形で試作された。手元の資料には「1941年6月27日に初飛行、驚異的な運動性能を見せつける」とあるが、その後どうなったのかについては何も言及されていない。
 やっぱり試作だけで終わってしまったのだろうか。こう、イギリスの仕事だし。
 パンジャンドラムとか。







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