トゥルルルル……
トゥルルルル……

「はいPront?」
「…………!」
「……ああ、日本かココ。もしもーし。どなた?」
「わっ、あたしメリーだけど」
「……はぁ」
「今、あなたのマンションの前から掛けてるんだけど……」
「そうか……」
「べっ、別に電話したくてしたわけじゃないんだからね!」
「そうか」
「そうよ!」

ガチャン。

トゥルルルル……
トゥルルルル……

「とぉるるるるるるん!」
「…………」
「どなた?」
「……あたし、その、メリーだけど」
「はい。こんばんアーベント。時間的にナハトだけどアーベントとはこれ如何に」
「聞いてる?」
「ナトューァリヒ」
「あなたの家の前から電話してるんだけど……その……行ってもいいかな?」
「Wohin?」
「は?」
「どこに」
「だから、その……」
「…………」
「……ば――――か!」

ガチャン。

トゥルルルル……
トゥルルルル……

「はいもしもし。ムシムシというとなんとなく卑語俗語っぽくてステキだと思いませんフロイライン?」
「…………(赤面しつつ)あたし。メリー」
「はいこんばんわ。久しぶり」
「さっき掛けたばかりなんだけど」
「じゃあ今しがたぶり。で?」
「あの……今、あなたの後ろに立ってるんだけど」
「へえ(←村上春樹風に)」
「……その、見ないの?」
「イヤだ」
「なによそれ」
「そもそも誰だよアンタ」
「いいから見なさいよ! 早く見なさいってば! 何よ! 怖くて見れないんでしょ! 弱虫! 怖がり! ば――――か!」

ガチャン。
ツー、ツー、ツー、ツー……